音也くんの大きな手が、頬に触れる。
そして…
「きゃーーーっ」「いやーー!!」と、観客から悲鳴が上がる。
それもそうだろう。
音也くんの顔がどんどん迫ってくる。
え、なに?
なにこれ。
キス、される?
ゴーーーン
「っ!」
12時を示す鐘のBGMが流れた。
まるでキスを止めるように。
音也くんは、まるで我に返ったかのように目を見開いていた。
「紺野さん!続けて!!」
「ぁ…」
小声で監督が叫んでる。
方針状態だった私を我に返してくれた。
この後の台詞はない。
ただ靴を落として、走り去るだけ。
私は音也くんからバッと離れて、少しだけ大きいサイズの靴を落として走った。
もっとゆっくりでよかったのに、私は全力疾走していた。


