好きな音。



先に舞台に立っている音也くん。


私が舞台に出て直ぐに、ダンスが始まる。


「よし、」


1歩踏み出す。

こっちを向いてる音也くんのところまで、歩く。


音也くんの手をとって、練習したとおりにお辞儀をしてステップを踏み始める。


練習通り、お互いの瞳を見て踊る。


ふと抱きしめられたこと、可愛いと言われたことが脳裏をよぎる。


一瞬にして顔が赤くなったのがわかった。


その次の瞬間、音也くんが足を止めた。


え?


慌てて私も止める。

だけどまだ、12時を示す鐘のBGMが流れていない。


なのに…。


「音也、くん?」


音也くんにしか聞こえないくらいの声で呼びかける。