特技かぁ。
そういえば…
『愛ちゃんの歌聞いたんだー。すっごい上手だった』
『だから、歌も取り柄じゃん』
音也くん、あぁ言ってくれた…。
歌が、歌うことが、自信を持って私の取り柄って言えるようになれたらいぃなぁ。
………違うな。
慣れたらいいな、じゃなくて、なれるように努力しなくちゃいけないんだ。
去っていった彼女のことを考えながら、私は舞台に立つ準備をする。
みんながいる場所に行くと、またしんとなった。
ギュッとドレスを握る。
けどさっきまでほど、自分が怯えてないことに気づく。
手足も震えてない。
大丈夫。
「紺野さん、そろそろ」
「はい」
優奈達が来るのを待っていて1、2分で優奈達が来た。
優奈が私の前で足を止めた。
「うた…」
「ん?」
「うーうん、後でいい」
「…そぉ」
パタパタと優奈が私を通りすぎる。


