好きな音。



ハハハと苦笑いする。


みんな帰ったか、部活に行ったかで1年の階は静かだった。


私たちの声だけ響いていた。



「それじゃあね」
「ん?」
「?」


下駄箱を通りすぎて部室に行かなくちゃならない。


だから、部活をやっていない音也くんとはバイバイのはずなのに。


音也くんは帰る気がないっぽい。


「音也くん、帰らないの?」
「うん。ちょっと見てみたくてさ」
「?何を?」
「愛ちゃんが歌ってるとこー」「え」


な、何で?

私が“歌ってるところ”を見るため?


奏くんたちに用がある、なら分かるけど。


私を見るなんて意味がわからない。


「いーよ!見なくて!!」


私は音也くんの言ったことを撤回させるために、ブンブン首を振った。


ブンブン振ってると不満げな声が聞こえてくる。