好きな音。



それ以前に、奏くんから言われたことを断れる気がしない。


「……」


よしっ。


私は3人に気づかれないように、そっと部室を出た。






「よかったぁ、誰もいない」


私が来たのは、北校舎にある部室から一番遠い南校舎にある音楽室。


音楽室に入って、黒いイスをズッとひいてピアノの前に座る。

鍵盤を見ながら、ぼーっと考える。


頭の中でメロディーを考えてもよかったけど、なにか楽器で弾いて考えたくなった。


だから、音楽室に来た。




とはいったものの、そう簡単には出てこない。


「うーん…」


腕をくんで、座ったまま海老ぞり状態。

一人で何やってんだ、って感じ。


他の人からみたら、変な人にしか見えないだろう。


ギュッと瞑っていた目をそっと開く。


頭の中に、3人の顔が浮かんでくる。