好きな音。



「無理ですっ」
「はぁ?」
「誰かの前で歌うなんて、そんなっ」
「カラオケとか言ったことあるだろ?」
「それはありますけどっ」
「じゃあそう思えばいい」


そんな無茶なっ!


「はい、これ歌詞」


いつの間にか後ろにいた、優しそうな男の子に歌詞の書かれた譜面を渡される。


「ちょっと、まっ」
「これから大勢の前で、歌うことになるかもしんねーんだから。今のうちに慣れとけ」


は?大勢?


「奏気ぃ早くない?」
「たぶん、そーなるだろ」
「まだわかんねーぞ」


は、話についていけないっ!


「おっし、いくぞー」
「な、ちょっ」


止める声も聞かず、三人は音を奏で始めた。


三人とも強引だっ!!


バッと譜面に書かれた歌詞を見る。


歌詞までまだある。


ザッと歌詞を見ると、何だか曲の雰囲気と合わないフレーズがある。


あ、ここはこっちの方が…。