絢は俺の前では泣かなかった。
陰で泣いているんだと思うと、
胸が締め付けられた。
だから、今も
俺のいないところで、泣いている。
「俺さ、絢といると寿命が延びるらしい」
笑いあえる毎日。
このまま、時間が止まればって思う。
遠い未来を夢見たり…
明るい未来を信じたり…
そんなことができるんだ。
生きてるって
すごくいいことなんだな・・・。
「…っ…っ」
だけど、確実に何かが忍び寄っていた。
もう、頑張ってくれないのか?
俺のために病気と闘ってくれないのか?
遠のく意識の中
俺の頬に絢の雫が、零れ落ちた。
泣くな
俺はまた、目を覚ますんだから。
『おい、待てよ絢』
『陽!遅いよ』
『え?優?』
眠っている間に、夢を見た。
真っ暗な世界に
俺が置き去りにされる・・・。
いちばんつらいこと。
孤独が苦しい…。
目を覚ますと、集中治療室にいた。
なんでここ?
倒れて病状が悪いとこうなんだよな。

