「全然、不幸だなんて思わなかったよ。ていうより、思えなかった。だってお母さんはいつだってお父さんといられるときは幸せそうに笑ってたから」





屈託なく笑った由美。
こんなにいい女を、どうして俺は傷つけてしまったんだろう…。


どうして俺は
絢しか愛せないのだろう






「そんな姿見たら、不幸だなんて思えないよね」



「…でも」



「だから、絢も陽と離れているより一緒にいたほうが幸せになれるんじゃないの?ちがう?」






こんな状況でも俺たちは
笑っていられるか?

うつむいた俺の背中を由美は力いっぱい叩いた。





「バカ…いてぇよ」



「元気だしな!絢は陽くんが思ってるより強い子だよ」






優に言われた。

きっと多分、俺は怖いだけ。
逃げて大切な人を傷つけて、自分自身を守ってる。


弱いのは俺なんだ。

死を考えると、人は自分の未熟さに気づけたりもする。







「運命ってなんだと思う?」



「陽くん?」



「運命なんて変えてみせる。お前に元気もらった。由美」






運命がなんだ

さだめがなんだ

絶対ってなんだ
“そんなもん変えてやる”

由美に元気つけられて、そんな強気なことも思えるようになった。






「諦めねぇ。絢のことも病気が治るってことも」





由美がいなかったら
優がいなかったら

こんなに頑張ろうと思えなかった。


生きて


必ず生きて





また、みんなで笑いあうんだ