ある日

フラフラと街に出ると、駅に向かう歩道橋の上に
絢の姿を見つけた。


泣いている…。


だけどもう
何もしてやれない。

それなのに
そんなことわかっているのに


足は歩道橋へと進んでいく。





「絢…」





そこに、優が現れていた。
その瞬間に、足が止まった…。





「泣くなよ…」





聞こえるはずもないのに、そうつぶやいていた。

そうだ・・・。
絢を慰めるのも、そばにいるのも


俺じゃない


優みたく、優しくて強い男。





「ごめん…。」




しばらくその様子を見ていると、

絢は笑った。


あの屈託のない笑顔で。
青空が似合う笑顔で…。





「俺がいなくても、笑っていられる」





弱い自分を見られるのは嫌だ。

そんなこともあったのかもしれない。
俺は歩道橋に背を向けた。


…愛してるから。見守るよ





俺の声は誰に届くことなく
ただ虚しく騒音の中に消えていく…。



奇跡も何も起きない




俺は

全てを失った。