「心はずっと近くにある。絢を、守り続けるから……」



「ありがとう」





観覧車はゆっくりと動き、地上に着いた。

夢が覚めて
魔法は解けていく。


幸せだった時間から
“孤独”と“寂しさ”と“苦しみ”
の、世界へ引き戻される。






「さようなら」
「さようなら」






それぞれの道へ

俺は光を失い
絢は新しい光を手に入れる。





いつまでも
彼女の笑顔が見ていたかったから

屈託のない笑顔が愛しくて、仕方ないから



空になって見守ろう
雲になって包み込もう



たとえ
離れ離れになっても

俺の心はそばにある






「……ごめん。絢…」






俺の背中を見送っていた絢。
遠く離れたところで俺は、振り返ってしまった。


泣いている




失いたくない
そばにいたい

人は愛を知れば知るほど
欲張りになる。





俺が欲張ったから・・・




その報いがこれ。





もう、欲張ったりしないから…。
だから

絢が返してほしい
それ以上


何も望まないから・・・。





涙を堪えて
嗚咽を飲み込んで

ただ、小さくなった絢に謝り続けた。





「ごめん…。絢…ごめん」





幸せにしてやれなくてごめん。
こんな俺でごめん。



さようなら…。