「まだ、居るのか。」
あの女子の集団を抜け出したあと、俺はまた走り出し、目的の場所、下駄箱へと来ていた。
つーか今は放課後だから下駄箱に来んのは当たり前だけどな。
だけど、俺はまだ帰らねえ。
下駄箱にまだあいつの、佐久間 夕の靴があるからな。
佐久間 夕。
ここに通っている女の中で唯一、俺に媚びない女。
だから勿論話し掛けられた事や、目が合ったら顔が赤くなるという事もなかった。
俺の周りに居ない女、そんなあいつに俺は興味を持ち、前日、あいつのクラスへ行きあいつの名前を問いだそうとした。
だけど、あいつは俺に教える気はなかった。
むしろ毒まで吐かれた。
そんな事は初めてで、更に興味を持った俺は、自分であいつの名前を調べ出した。
あいつと同じクラスの奴に聞いただけだけどな。
たけど、そこで分かった事が一つ。
あいつ、佐久間は俺にだけじゃなく、話し掛けた奴全員に毒を吐くらしい。
誰彼構わず。
だからあいつはその性格の悪さと、その色白な肌、腰まである長い黒髪を掛けて、“雪女”と呼ばれているらしい。
俺的には、自分に媚びまくってくる奴の方が性格悪いと思うがな。


