呆れて何も言えなくなった私は、会計の人に言われた値段分のお金を出そうとした。
だけど、それより早く横から一枚の英世さんが出てきた。
「は?」
「お釣り、420円になりまーす。」
「どーも。」
お釣りを渡す際に高木ににこっと微笑まれた会計の女の人(推定30後半)は顔を赤くしながら下を向いている。
それを見ながら私は、あーやっぱり顔だけはいいんだな。顔だけは。と思っていた。
...ていうか。
「なんで勝手に払うのよ。」
私は、もう用はないと言わんばかりにカフェから出ようとする男の背に向かって文句を言った。
だけどこちらへ振り向いた男はさも当然というような顔をしていた。
「こういう時は普通男が払うもんだろうが。」
それは“一緒”にきた時でしょ?
あんたは“ついてきた”んじゃない。
そう言いたかった。
だけど、予想もしてなかった言葉に何も言えない私はずっと下を向いていた。


