「ハッシーはこの基本が好きなんだよ。とりあえず、ここ読んどけ」 テキストのあるページを指差して、その一言のみ。 「それだけ!?」 『貸し』っていうほどの価値、なくない!? 「信じねぇならそれでもいいけどな」 真弥さんはそう言って、カウンターに向かう。 その後ろ姿を私は目で追っていた。 …無意識に。 「………はぁ」 目線を手元に落とす。 すがることができるものは真弥さんの言葉だけ、か…。 私はテキストをおとなしく読み始めた。