月夜の訪問者

「ええ、結婚を済ませたなら、全てを雅に譲る気です。」

「親父、話してばっかじゃ友理の手が動かない」

お父様の言葉に、雅が制止をかける。

「ああ、すみません友理さん」

慌てて、私に謝る父様

「あっ、いえ…構いません」

私も返答し、食事を進めた。


仕事を譲る条件が結婚なのね…


ハッまさか


結婚する気は無いが、仕事は欲しい
そこで私と結婚し、仕事を譲り受けたら…

『離婚』

する積もりなんだわ!



それなら辻褄が合うじゃない
絶対そう!
信じられない

雅=女の敵ね!!


私はスプンーを、ぎゅっと握った。

「友理?どうした」
「友理さん?食事が口に合いませんでしたか?」

雅と、お父様に声をかけられ
ハッと、手を見る。

思わず、スプンーを曲げてしまっていた。

「あっ、いえ
まだ力感覚が解らなくて、思わず…」

苦笑しつつ直してみる
あれ?固いなぁ

「和泉!スプンーを替えてやってくれ」

雅が呼んでくれて、和泉がスプンーを替えてくれた。

「あっ有り難う」
「全く、馬鹿強だな」

笑う雅。