「えっ奥様が…」
「奥様の命令よ」

って、さっきは来るなって言ってたのに

なんて文句も言えないし

「解りました…」

と台所へ走る私だった。












あの日から数日、雅なんて人は現れない
姉さんの元にも来ないらしく、姉さんはイライラしている。
その怒りを私にぶつけるのは辞めて欲しいのだけど

「ほら、まだほこりが残ってるじゃない下手くそ!」

と手を踏みつけられたり、わざと水の入ったバケツをひっくり返されたり
仕事にならないわ

でも言い返せる訳もなく増やされた仕事を片付ける。



そして離れに戻り

「あんたも大変よね」

なんて女中の皆から慰められる毎日

そうなんら替わりない毎日。


あんな雅なんて男の事は忘れよう

『忘れる訳ないよな』

忘れてやるわよ

そんな事を胸に誓って布団に潜り込んだ




プッと外の月明かりに目が覚める
扉、ちょと開いてるわ

閉めようと起き上がり扉に近寄る

フッと夜空を見上げれば月が出ている
ああ、そういえばあの雅とか言う男と出会ったのもこんな微妙な月夜の晩だった

そう、満月の様で満月じゃない微妙な月