月夜の訪問者

そんな訳ないわね、あんな素敵な人が雅を好きになるなんて
有り得ないわ


もしかして逆かも知れないわ
麗香さんを好きなのは雅で…

ハッ

それなら辻褄が会う!

麗香さんの気を引くために、私を利用したんじゃないかしら

私と結婚宣言し、麗香さんの注目を惹き付ける
そして、読み書きの出来ない私の家庭的教師に付けて誘惑する気なんだわ

なら、私みたいな存在は打ってつけじゃない。

松本家の血を引いてはいるが、女中との間で
女中として育てられ、読み書きも出来ない

普通のお嬢様ならこんな事出来やしないけど

私なら良いと思ったんだわ

後腐れ無く捨てられるってね。

雅の奴、そんな事を考えて
許せないわ

私は手に力を込めた。




「おい、亭主が帰って来たって言うのに迎えにも出ないとは
どういう了見だ!」

突然後ろから声がし

「うわっ」

思わず声を上げてしまう私

「色気のない声を上げるな
なんだ?片付けなんてメイドに任せとけと行ってるだろ?」

私の顔を覗き込んでくる雅

「ノックぐらいしなさいよ!」

考えに夢中で気づかなかった。