月夜の訪問者

「全然かすり傷じゃないわよ馬鹿!早く救急車!電話は何処?」

私は、寄って来た女中に尋ねる。

「はっはいっ直ぐに!」

と、駆けていく女中

「美雪ちゃん!
友理あんた覚えてなさいっ」

奥様は、私を睨むと姉さんを連れ、逃げる様に会場から出て行った。

「姉さん!奥様!」

慌てて後を追い掛けようとした私だが、手を掴まれ走り出す事が出来なかった。

「重症の旦那を置いてく気か?随分な嫁だな」

と笑う雅

「あんた、さっきかすり傷ってっ」

私が振り向いたと同時に倒れる雅
慌てて支える

「ちょとっ嘘でしょ?しっかりして雅?雅?」

呼び掛けても返事をしない

「おい!救急車はまだか!」

と、遠くで誰かの叫び声が聞こえたが、思考がまとまらない

頭が真っ白だ

どうしょう雅が死んじゃたら
私のせいだ

「雅っ雅っ」

お願い目を覚まして!











「っ…ゆ…り!ゆり…ゆりっ友理!!」

名前を呼ばれ目を開ける

あれ?



いつの間に寝たの?


早く起きなきゃ

朝御飯作らなきゃ


また姉さんや奥様に怒ら…