月夜の訪問者

世間体では、地位も名誉も有るのだろう
それに引き換え私は…

女中

しかも不倫で出来た卑しい存在

存在すら認められない存在

並んで歩ける訳も無いのに…

「下ろさないし離さない」

雅は、言うと大広間であろう部屋の前に立ち、扉を開けた。

私には、止める言葉を言う暇もなかった。

もう駄目だと、目を閉じる。

「雅様だわ!」
「雅様!!」

と、言う歓喜は一瞬で治まり

「ねえ、誰かしら?黒髪の女性を抱いてらっしゃるわ」
「まさか、今日のパーティーって…」

と、会場は一気に不穏な空気へと

トン
と、私を下ろす雅
怖さで何も考えられない私は、雅の胸に顔を埋めて隠す

どうか奥様や姉さんに気付かれませんように

ああ、もう生きた心地がしない

「今日は集まって貰って有り難う、俺の結婚相手を紹介する」

と、雅

「やっぱりだわ」
「ショック」
「相手は誰?」

ざわつく会場

「ちょっちょと…」

まさか…
私は、雅を見上げる

違うよね?

「見てもう既にお分かりだろうが相手はこの女性、松本家の御令嬢である友理さんだ」

と、私の肩を掴み無理やり前を向かせる雅

えっええー?