「こんなところで騒いでても仕方ないからとにかく中入ろう。中で話そう」
どれだけの沈黙があったのかわからないが大也は落ち着いた声で2人に向かって言う。
「でも………、こんな時間に家の方に迷惑だし………。電車も………」
深青はとまどいながら答える。
だけど、大也は一歩も引く気配もない。
「大丈夫。うち、共働きで今はまだ帰って来てないから。それに、うまいこと言って、夜は親に送ってもらうようにするから。……………こんな状態のまま帰らないでくれ………」
1番最後の言葉。
これが本当の大也の気持ちだ。
思いつめたような表情で深青を見つめる大也を見、みゆきは不安に駆られる。
今日、学校ではいつもどおりなのに、自分が知らない間に2人に何があったのか。
みゆきは自分の胸がとてもざわついていた。
「………わかった」
深青は少し考え答える。
そして、優奈のほうを見る。
優奈は無言で頷いた。
まるで、深青の考えも全てわかっているように………。


