行動の速さとこの出来事に対応できない大也はただその光景を見ているしかなかった。


あんなに隠さなくてはいけないと思っていたのに今の深青と優奈の頭にはそのことは抜けていた。


「正木くん、早くどいて!」


「はい!」


いつもとは雰囲気の違う深青の言葉に大也は素直に返事をし、ベランダの端へとよる。


深青は大也が離れたのを確認するといきなり上へと飛び上がり空中で弓を構える。


だが、そこには矢は備え付けられていない。


しかし、すぐに弓が光り始め構えていた深青の手に光の矢が現れる。


そして、トカゲに向けて一気に放った。


矢はまぶしいほどに光輝き、トカゲに向かって一直線に飛ぶ。


トカゲは矢を手ではらおうとするが矢の速度の方が速かった。


矢はみごとにトカゲの頭に突き刺さる。



「ギャアアアアアア!」



断末魔の叫びをあげ、トカゲは矢を引き抜こうと暴れまわる。


だがその前に矢の光に包まれ、トカゲの闇は呑み込まれ消滅してしまった。










大也はトカゲの消えたのを確認してから深青の存在を思い出す。


飛び上がった深青がどこへ消えたのか自分のいるベランダには戻ってこない。


大也はベランダから下を見下ろす。


そこには何事もなかったように無傷の深青が手を振っていた。


大也は踵を返し、玄関へと急いだ。