「ど、どうした?」
「優奈! 正木くんの家知ってる?」
両肩を掴まれただ事ではない顔をしている深青に優奈は頭の回転を利かせ答える。
「し、しらないけど………。でも、みゆきちゃんの住所なら知ってるわよ。あの2人、家が隣同士だから」
「じゃあ、行こう!」
深青は優奈の腕を掴んで走り出した。
「ちょっと、一体何があるわけ?」
必死な形相に優奈はその意味がわからず戸惑う。
「走りながら話すから、とにかく住所だして」
深青に言われるまでもなく優奈は手帳を取り出し、携帯電話に住所を登録し検索しはじめる。
「はやく、はやく~」
優奈は携帯に一方的に話しかける。
家まではまだわからないが、途中までいつも帰っているので駅がある方角へととにかく向かうことにする。
「こら! 誰だ、止まれ!」
いきなり、懐中電灯の光がこちらに向けられる。
2人ともすぐに顔を隠し、警告を無視して職員玄関から靴を履きながら校門へと走っていく。
幸運にも見つかった時、距離があったために追いつかれることもなかった。
2人とも急いでいたために侵入していたことをすっかり忘れて、いつもどおりばたばたと廊下を走り、階段を駆け下りてきたために気づかれてしまったのだろう。
これには2人とも少し逃げながら反省した。


