「悪しき闇に囚われし魂たちよ。示す光に導かれその存在を指し示せ。邪心、悪意、妬み、偽り、殺意。悪しき心は我、如月の血を引く深青が引き受ける。清らかな魂、光を持って天へと解き放たれよ!」
深青は右手の人さし指と中指を立て、上へと勢いよく上げる。
その瞬間、天井近くが明るく光る。
その光景は霊感の全くない優奈でも見えた。
いくつもの無数の蒼い炎が光に引かれるように空中へと上っていく。
そして、うっすらとだけだが優奈は炎の中に人の面影が見えたような気がした。
「ふう、これで大丈夫」
深青の言葉通り、明るく光っていた天井が急に今までのように暗く戻る。
目を奪われていた優奈はハッと我に返った。
「今ので………?」
「うん、呪法は解いたよ。呪法を行うために巻き込まれた魂も開放したし、呪印も解いたから」
「よくわかんないけど、解けたならよかった」
全く理解していないが片付いたのならいいかと深く追求しないことにした。
「じゃあ、次は屋上に行きますか」
「え? まだ、あるの?」
もう終わったと思っていた優奈は驚きの声を上げる。
深青は当たり前と言った顔で優奈を見た。
「植木鉢の件は、こことは別物だよ。化学室はこの教室が狙われたみたいだけど、植木鉢は明らかに誰かを狙ってる。もしかしたら、呪法をかけるために名前がわかるかもしれない」
優奈はポンと深青の肩をたたき、がっくしと頭を下げた。
「どうして、そんなにいきいきしてるわけ? 普段のあんたからは想像できないよ」
「別にいきいきなんてしてないよ。ただ、命を失う人がいるかもしれないのを黙って見過ごすことなんてできないよ。失敗したからにはきっとまた狙うはずだから」
優奈は深青の言葉に反論できなかった。
確かに言っていることは正しい。
だけど、優奈は思うのだ。
そのためにいつか深青は自分の命を落とすのではないかと。
優奈としては薄情な考えかもしれないが誰かを助けるために深青が危険な目に遭うぐらいなら、助けないでいてほしい。
だけど、そんなことは口にはだして言えない。


