鏡の前に立ち、髪をギュッとくくる少女。


茶色のセーラーカラーに赤いリボンを少し引っ張りスカートの丈をチェックする。


「よし! 大丈夫」






 「深青(みお)――――!」


階下から呼ぶ声を聞き、深青はドアに向かって答え返す。


「はい! 今、行きます」


黒く長い髪を翻し、深青は机の上に置いていた真新しい鞄を持ち部屋を出て行く。







リズムよく階段を降り、リビングへと入るとそこにはすでに妹の唯香(ゆいか)がサラダを食べながら座っていた。


「おはよう。唯香、めずらしく早いね」


いつもは、遅刻ぎりぎりの妹がすでに食事に入っている姿に深青は驚く。


「私、もしかして遅い?」


不安になったのか深青は部屋の時計を見る。


だが、部屋の時計はまだ7時を指す前だ。


「ふふふ。大丈夫よ。まだまだ余裕があるから」


くすくすと笑いながら年齢よりも若く見える母、さゆりが深青の朝食を持ってくる。


「あ、ごめん。お母さん」


深青は持ってきてくれた朝食を受け取って、マグカップにコーヒーを注ぐ。