「あれ? 夏川さん、体もういいの?」


優奈に圧倒されていたみゆきも冷静になり、優奈がいることに驚く。


いきなり、話の筋を変えられた優奈は「あれ?」と思いながらも答える。


「あー、平気平気。今まで熱なんて出たことなかったのに急に出て、びっくりしちゃったよ。あはははは」


(優奈、話の筋がずれ始めてる。)


後ろで聞いていた深青は心の中で優奈につっこむ。


「それは大変だったね。でも、熱初体験したことになるんだ」


「そうなんだよね。あれは結構つらいね。ベッドから降りるのもフラフラしてもう大変。唯一の楽しみの食事もあまりおいしく感じないし………」


「そうそう、学校休めてラッキーって思うけど、ほとんど寝て過ごすから時間がもったいないんだよね」


「うんうん、暇だし、時間経つの遅いし」


話が完璧にずれていることに深青は優奈に耳打ちをする。


「優奈。行方不明者のことと、正木くんと仲直りさすんでしょ」


深青に言われ、優奈はハッとみゆきに向き直る。


「あのさ、世間話はそれぐらいにしてさ、本題に移っていいかな?」


すっかりみゆきのペースに巻き込まれそうになったのを深青の助言により優奈は元に戻す。


「………………」


みゆきは黙り込み、一拍置く。


「………まだ、来てないよ」


深青は行方不明になった子の席を見る。