突風の音の中で涼やかで力のある声が響いた。



大也は目を開け、声のする方向を見る。



だが、探すよりも早く空が激しく輝き始め、その中で巨大な物体がもがきながら消えていくのが見える。




「ギャアアアアアア!」




耳につく叫び声と同時に光は闇を包み込む。


あんなに巨大な黒い物体は光に飲み込まれてあっと言う間にその場から消えてしまった。






呆然と黒い物体が消えてその場所を見ていた大也の視線の端に黒い髪をしたセーラー服の女の子が映った。
 



 (女? なぜ、あんなところに人が………?)



少女が立っているのはなんと家の屋根の上である。


じっと少女を見る大也。


その時、大也に背を見せていた少女が方向を翻し、こちらに向いた。


と、その瞬間姿を消したのだ。


だが、姿を消した少女を見てもただ、呆然と立ちつくしてしまう大也。


大也はただ彼女が消えた場所を一点に見つめていた。





ほんの、一瞬だった。


だけど、その一瞬に大也は信じられないものを見てしまった。


(今の女。目が紫に光っていなかったか? 今はカラーコンタクトがあるけど………。カラーコンタクトであんな色になるか? たとえ、光の加減でもあんな色にはならないだろ)


一瞬にしていろいろなことが頭を駆け巡る。


黒い物体を倒したのが彼女なのか、それとも関係ないのか、そもそもなぜあんなところにいるのか、彼女はどこに行ったのか。



だが、そんなことよりも光り輝き吸い込まれそうな紫の瞳。


それだけが、とても印象に残った。