「本当でも、俺、別に興味ねえもん。誰が行方不明になろうと」


予想外の大也の答えだったのだろう。


みゆきはポカーンと口を開けてぱくぱくと動かす。


そして、拳を作ってぷるぷると震わす。


(やばい………)


そう深青が思ったのが早いか遅いか大也の顔にみゆきの拳が入った。


「そんな、冷たいやつだとは思わなかった! ………いや、あんたはもともとそういうやつだった。あんたみたいな冷酷なやつ、金輪際助けてあげないから!」


いわゆる言い逃げ。


みゆきはそれだけ言って走って行ったが、立ち止まって振り返りベーッと舌をだした。


「いってぇ! あの馬鹿力が。女がグーで殴るなってーの」


殴られた頬を擦りながら大也はゆっくりと殴られた拍子に飛んでいった鞄を拾う。


「でも、みゆきちゃんの気持ちもわかる気がするな。たぶん、気休めでもいいから同調して欲しかったんだよ」


深青は拾っている大也に向かって言う。


拾い上げて大也は深青の顔を見つめる。


「俺に言われたってどうしろって言うんだ」


「だから、聞いてあげるだけでいいんだよ。同じクラスだから他人事じゃないし公には言えないことだから、正木くんに話聞いてもらうだけで少しはすっきりするんじゃない?」


「そう言われてもなあ」


大也はぽりぽりと頭をかく。


深青は思わずため息をついてしまう。


この鈍さ………。


どうやら、みゆきの気持ちなど露ほども大也はきづいてないらしい。


大也の言う気持ちもわからないではない。


だけど、深青は同じ女としてみゆきの気持ちもわかる。


だから………。


深青だってどっちの気持ちを持つか悩む。