「もう、聞いてよ」


目的地踊り場に到着したみゆきは早速話をはじめようとする。


たいそう興奮しているのだろう。


息が上がっている。


「だから、さっきから何なんだよ。一体。みんなに聞かれちゃいけない話なのかよ」


反対に冷静な大也はみゆきに文句を言う。




だが、全く聞いているのか聞いていないのかみゆきはその言葉を無視して自分1人話を始める。


「あ―――! 本当は夏川さんにも聞いて欲しかったのに! 今日、休みなんて」


くやしそうに話の本当の筋からは離れた話をするみゆき。


それを見ていて大也がいらいらしているのが深青にもわかる。


「あのさ、話があるなら早くしてくれ。俺たち鞄も置いていない状態でお前に連れてこられたんだぜ」


「ごめん、ごめん。だけど、どう話せばいいのか自分でもわからなくてさ」


「それなら、話がまとまってからまた話してくれ」


大也は教室へと引き返そうとする。


みゆきはぎょっとして大也の腕を掴んだ。


「待ってよ。話すから、がんばって話すから」


(本当に付き合ってないのかな?)


2人の様子を見ながら深青は思う。


傍で見てる限りではただじゃれあっているようにしか見えない。


(絶対、2人の関係を知らない人が見たら付き合ってると思うだろうな)


そんな2人を見ながらうらやましく思える自分がいる。


恋なんて想いはもう当の昔に感じただけで今は自分は枯れているようなのに不思議と2人を見ると温かい気持ちになる。


その心に深青は驚く。


「あのさ、驚かないで聞いてね」


どうやら、やっと本題に入るらしい。