「大也―!」


教室に入ろうとした深青と大也をいつも聞いている声が呼び止める。


「みゆき。何だよ、大声で………」


いつも元気いっぱいだが、声とは裏腹にその表情は心痛な顔をしている。


「あ、おはよ。如月さん。………あれ? 夏川さんは?」


いつも隣にいるはずの優奈の姿がないことにみゆきは気づく。


でも、それよりも何か話したくてムズムズしている感じだ。


「風邪で休み」


深青から理由を聞いたら、すぐにみゆきは本題に入る。


「あ、そうなんだ。それより、大変大変! 大きな声では言えないんだけどさ」


「もうすでに大きな声だよ。見てみろ、クラス中注目してるぞ」


大也のすばやいつっこみ。




みゆきは大也の後ろを覗き、クラスの生徒がこっちを見ているのを確認する。


「やばい! 2人ともこっちこっち」


みゆきは大也と深青の腕を掴み、引っ張って階段の踊り場へと連れて行く。


理由もわからず連れて行かれる深青と大也はお互いに顔を見合わせる。


そして、首を傾げた。