「幼いながら、あの時は悩んだな」


笑みを浮かべ、写真たてを眺めながら優奈は思い出す。




今でこそ明るくなったが、深青はまだ自分を偽っていると優奈は思う。




優奈は写真たてに写った少年に向かって真剣な顔で言う。


「私じゃ駄目なんだよ。今でもきっと。深青が本当の自分を見せるのは綺羅(きら)の前でだけなんだよ。綺羅、深青を救ってあげて」


どうしてかわからない。


だけど、深青と綺羅の中には何か強い絆があるように感じてしかたがなかった。


綺羅のいる学校は知っている。


だから、会おうと思えばすぐに会いにいける。


だけど、今はまだ会ってはいけないような気がした。


きっと、会いたいときは深青自身が彼の元へ行くと思うから………。


その時はまだ来ていないのだ。




幼い頃の想いをずっと今も思い続けている。


そんな漫画のような話を自分の身近な人物がしているのかと思うと笑いそうになる。


自分にはそんな乙女らしい想いなど持ち合わせていないのだから………。


少しは、深青の乙女らしい一面をもらいたいぐらいだ。


優奈は思う。


自分の前世は絶対男だと。


そんなことは誰にもわからないのだが・・・。







「学校………、どうしよう」


結局、優奈はまた初めのように悩むのだった。


「深青、大丈夫かな?」


その優奈の心配は違う形で当たっていたと言うべきだろうか。


事件は起こり始めていた。