「よ! 今日は1人か?」


深青は後ろから声をかけられ驚いて振り返る。


「正木くん。そういう正木くんこそ。みゆきちゃんは?」


声の主、大也の隣にいつもいるはずのみゆきの存在に深青は首を傾げる。


「今日は日直なんだって。朝早く起こしにだけ来て、先に行った」


「一緒に行かなくても、起こしにはくるんだ」


深青はクスクスと笑う。


その光景がまるで目に浮かぶようだ。


「そんなに笑うなよ」


「ごめん。だって、もう付き合ってるみたいだもん。どうして、付き合わないの?」


「だから、俺たちはそんな関係じゃないって。前も言っただろう。幼なじみ。近所。腐れ縁。それ以外の何でもない」


「わかりました。まあ、そういうことにしておきましょう」


「だから! ………もう、いい」


わざわざ否定するのもしんどくなったのか大也はあきらめモードに入る。






大也とは何気ない関係が続いている。


彼に見られたという負い目が深青にはあるが、様子を見る限り彼には今のところ何の変化もない。


別にこれといった心配もなく、取り越し苦労になりそうだ。





だけど、もしものこともある。


そのために深青は気を抜かないように心がけていた。





こうやって何事もなく、こんなふうに続くのを深青は願った。