「ただいま」
家に着いた深青はまっすぐにリビングを抜け自分の部屋に入らず、和室へと向かった。
そして、座って手をあわせる。
目を閉じ、一拍置いて目を開けた時にその目に入ってきたのは父の写真だった。
まだ、若い30代とは思えないほどのまぶしい笑顔だった。
まだ小さな子供だった頃、まさか父がこんなに早く逝くことなど思いもしなかった。
だが、父は深青がまだ10歳の時にこの世を去った。
それも、自分の目の前で………。
今でも目を閉じればあのときの光景を思い出せる。
父が最後に残した言葉………。
「生きろ。」
それが、何をさしているのか今の深青にはわかる。
自分の力のせいで襲ってくる悪霊たちから父は自分たちを守るために犠牲になったのだ。
その父の言った一言。
それは深青の心の奥深くに眠っている。
自分は狙われて、そのために父は死んだ。
だから………。
些細なことかもしれない。
それでも、大也のことを気をつけなくてはいけないのだ。
自分を狙っている人物がいる、この事実を忘れてはいけない。
そう深青は自分に言い聞かせるのだった。


