「どういうこと? 見られてたなんて」


ホームで電車を待ちながら優奈は深青に話しかける。


「でも、普通の人なら見えてないはずよ。結界を張ってたし」


淡々と答える深青。


全く2人の内容は意味がわからない。


だが、深刻なことだけはわかる。


「普通の人ならってことは、正木は普通じゃないってこと?」


深青は顎に手を添えて少し考える。


「それを聞いてからそれとなく見たけど、多分。霊力があるみたい。彼の周りに少しだけだけど、力が溢れていたから………」


「そっか。なんかやばい………。だから、あんなに深青を見てたのね。あの驚き方からして力を使ってるところを見られたんだよね」


「目の色を見られたということは力を使ってる時だから」


深青は真っ直ぐに前を向き鞄についている鈴を触る。


「でも、気づいてないみたいだから別に力を使わない限りは大丈夫だと思う。気をつけるよ」


心配そうな優奈に深青は笑顔で返す。


「うん。本当だよ。これからは気をつけてよね」


深青が笑顔を向けるので優奈も明るくいつものように振舞う。


だが、それは外からの取り繕ったもので深青も優奈も心の奥底の不安はぬぐいきれてはいなかった。












 2人の話が何を指しているのか、全くわからないのかもしれない。


だが、それは大也が合格発表の帰りに遭遇した出来事。


それを表しているのだ。


あの時、偶然にも大也が見た少女、それが深青本人なのだ。




大也が見間違えたと思っていたのは、それは間違いではなくあっていた。


だけど、深青はそのことを忘れてほしい。


何事もなく、平和に生活を送るためには………。