「実は合格発表の時に見かけた人なんだ。多分、向こうは俺のこと知らないと思うけど………すごく………印象に残った人だから………」


「合格発表? あの突風が吹いた日?」


みゆきが不思議そうに大也の顔を見る。


思い出そうとしているのだろう。


「そう、あの日。お前は見てないだろうが、遠目で一瞬な」


「そんな一瞬だけ、それも遠目で見ただけの人のことを気にかけるの?」


みゆきは不服そうに大也に言う。


「ああ。目の色が………。一瞬だけだけど、紫だったから」


あまり話したくなかったのだろう。


大也は歩みを速めた。


そのあとを、みゆきは追いかける。




だが、優奈と深青はそんな2人を見ながら追いかけることもせずにゆっくりと歩いていた。


その表情は暗く重かった。







「じゃあ、私たちは電車だから。また明日」


駅の前に着いて優奈は大也たちに手を振る。


その隣で深青もゆっくりと笑顔で手を振り、改札へと消えて行った。