「大也! 帰ろう!」
教室を出ようとした深青と優奈の前にいきなり少女が飛び込んでくる。
「みゆき」
大也が驚いたように思わず名前を呼び、駆け寄ってくる。
「あれ? あなたたち確か朝の………」
少女はぶつかりそうになった2人の顔を見て目を丸くする。
「ああ。同じクラスになったんだ。今朝のことは俺の見間違いでさ、その誤解も解けたんだ」
「あっ、そうなんだ。よかったわね」
少女はゆっくりと2人の間を抜けて自然に大也の隣に並ぶ。
「彼女?」
その行動を見て優奈がすかさずちゃかす。
「ば、違う! ただの幼なじみ。家が隣なんだよ」
すぐに否定する大也。
その時に一瞬みゆきの顔が翳ったのを深青は見てしまった。
(この子、もしかして正木くんのことを………)
ただの直感だが深青はそう感じたのだった。
だが、みゆきは本当に何もないように明るくふるまう。
「そうよ。あたしたち家が隣同士なの。本当、それだけ。頼りないこいつを面倒みるようにこいつのおばさんに頼まれてて。もう、大変なんだ」
「なんだよ、頼りないって。それに、俺は別に頼んだ覚えもないし、お袋が勝手に言ってるのをお前も間に受けることないだろ」
「なによそれ! 誰のおかげでこの学校に入れたと思ってるのよ。それにね、あんたは昔から何をするにもあんまり考えないし適当なの。それをずっとサポートしてきたのはあたしなんだからね。忘れないでよ!」


