「あ―――――! あんたは」


入学式を終え、各自クラスの教室に入ったその時だった。




優奈は大声を出し、そいつを睨みつける。


「優奈。あんまり大きな声は………。入学早々みんなの注目集めてるよ」


今にもとっ掴みそうになっている優奈を抑えようと深青は諭す。




だけど、抑えようとしている深青にだって動揺は隠せない。


だが、それは仕方のないことだ。


目の前にいるのはさっき、校門のところで会った変な男だったからだ。


あの時は遠目だったし、あまりにジロジロ見るのも失礼だと思ったから見てなかったのだが今実際に見ると意外とかっこいい部類に入る男のようだ。


目を見る限り別に変な感じもないし、逆に今は彼の方が優奈に迫られておどおどとしている。


「どうして、私たちを見ていたの?」


助け舟を出したつもりはない。


しかし、結果はそうなった。


困っている彼を見て深青は彼の目を見て問いかけた。




彼は深青の目をじっと見てから一拍おき息を吐いた。


「似てるけど、人違いみたいだった」


「私? 私に似てるの? その人………。誰だかわかんないけど………」


自分の顔を指差しながら深青は首を傾げる。


優奈も少し気にかかるのか黙って聞いていた。


「ああ。少ししか見てないんだが、すごく似てる」


真剣な眼差しにおもわず深青は目を背けたくなる。


「さっきは悪かった。すごく似てたんでおもわず声が出たんだ。嫌な思いさせたなら」


「ああ、大丈夫。理由がわかったら別に………。また、その子に会えるといいね」


深青は笑顔を見せる。


その笑顔につられたのか彼も少し笑顔を見せた。