あの時の鈴は今も深青の鞄についている。


1日も深青の中では綺羅のことを忘れたことなんてなかった。


鈴が今も自分たちを結び付けてくれていると自己満足だと判りながらも深青は信じていた。





 約束など、わざわざしなくてもいつでも会いたいときは会いに行くから会えると、あの時の深青は思っていた。




その後に起こることそんなことはあの時には思いもよらなかったのだ。




小さな時に交わした約束が今はとても難しくなるなんて………。





 優奈は隣ではしゃぐ大切な友人がいつか大切な人と重いしがらみから解き放たれ再会できることを望まずにはいられなかった。


そして、また、深青も今を懸命に生きようと思っていた。


綺羅と再会できる日を夢見て………。







 たなびく風が2人を揺らし、夕暮れ時に映し出す。







運命は今動き始めたばかり。


大也たちとの出会いもまた、時の流れの1つの出会い。




生まれた時からの運命を深青は一歩踏み出したのだ。




これから先にはもっと過酷な運命が待ち受けている。


自分が背負っている宿命を良くわかっている深青でも、これがその序章だとは知る由もなかった。






 ただ今は、宿命も運命も何もなく笑っている2人を風は優しく包み込んでいた。