「…………綺羅………か………」


(そいつが如月が想っているやつ………)


物陰から深青を見ていた大也は何がおかしいのか少し笑う。


「大也?」


隣にいたみゆきは不思議そうに大也の顔を覗きこむ。


「みゆき………。俺、今気づいたよ」


「え? 何を?」


「俺………、如月のこと好きみたいだ………」


「え? ………え? 大也? だって、如月さんは………好きな人が………」


みゆきは動揺しながらも大也に真実を告げる。


聞こえはいいが、実のところさっさとあきらめるように言ったのだ。




だが、そんなみゆきの目論みはあっさりと破られてしまう。


「知ってる。だけど、そいつは今、如月の傍にはいない。だったらチャンスはあるだろ。どっちかというと近くにいる俺のほうが有利だったりして………」


「あわわわ……。ちょっと大也!」


悪代官のような顔をしている大也を見てみゆきは恐ろしいことを考えずにはいられなかった。


(今まで、近くにいて恋とかそんなのとは全くの無縁だったから知らなかったけど………、もしかして大也って………かなり積極的だったりするのかな………)


「そうとわかれば………」


大也は一言だけ言うと深青のほうへと走り寄っていく。


(ぎゃ~! まずい! ダメダメダメ!)


みゆきは大也を引きとめようと腕を伸ばすが、手はむなしく空を切る。