どれほどの間、揺れていただろうか。
揺れが収まり、優奈たちは顔を上げた。
そこには先ほどの闇も光も何もなく、ぐったりと座り込んでいる湯川の姿とそれを見下ろしている深青があった。
湯川はぼんやりとした表情でゆっくりと深青を見る。
「俺は………助かったのか? ………お前が、助けてくれたのか?」
湯川の表情がどんどんと晴れていく。
だが、そんな湯川を見ている深青の目は限りなく冷たかった。
「呪術返しは解いておいたわ。あなたがもう1度人を呪うなんて馬鹿なことをしない限りは命の危険はもうないわ」
湯川は明らかにほっとした顔をする。
「助けてくれたんだな。ありがとう、ありがとう」
今までの自分が深青たちにとった行動を忘れ、湯川は礼を述べる。
その光景は今までのことはこれでチャラだとでもいうような感じだ。
だが!
深青がそんな優しいわけがない。
いや、優しいだけじゃなく、こんなことで許していてはただのお人よしの大馬鹿野郎だろ。
深青は湯川を睨みつけ、強い口調で告げた。
「勘違いしないで! 助けたわけじゃない。あなたはちゃんと報いを受けなければならない。一条さんを苦しめ、追い詰めた責任をね。幸い、呪術は失敗してるし、正木くんも無事だから、これ以上何もするつもりはないわ。………………だけど!」


