「先生………。一緒だよ。あたしも行くから………」
静かに弱弱しい声が大也たちの傍から聞こえた。
大也たちは声のした方向を振り返る。
「一条さん!」
優奈は驚きの声をあげる。
香織は涙を流しながらふらふらの体を鞭打つようにして湯川の方へと向って歩いていく。
「ダメよ! 危険だわ。死んじゃうわよ!」
優奈は香織にしがみつき、必死に押さえる。
「離して! 死んでもいい! 先生と一緒なら!」
香織はどこにそれほどの力が残っていたのかと思うほどの力で優奈を振りほどき、駆け足気味に湯川のもとへと近づいていった。
香織の手があと数センチで湯川を覆いつくしている闇に触れるという時、急に闇が霞んでしまうほどの光が湯川を襲った。
あまりにも神々しい光とその光により生じた衝撃で香織は後ろへと飛ばされる。
飛ばされるといっても、軽くなので尻餅をつくぐらいの衝撃で済んだ。
優奈は香織の傍へと駆け寄る。
そして、香織の肩を抱き、光放たれた湯川がいる場所を見る。
光は神々しさを増し、今では闇が見えなくなっていた。
そこから少し離れた場所に深青は居た。
ひとさし指と中指を立て、目を閉じ何かを唱えているようだ。
何を唱えているかはこの距離からは全くわからないが、唇が早く紡がれているのが微かに見える。
優奈は幾度となく見た光景だが、やはり何度見ても驚かずにはいられない。
優奈は初めて深青の力を使っている光景を見た時、深青は神なのではないかと子供心に思った。
あの時は子供だったからと思っていたが、やはり、力を使っている深青を見るとあの時と同じように思ってしまう。
幼かったからとかそういうことではないのだ。
成長しようともそれは同じで、深青の神々しさと美しさに無条件で惹かれてしまうのだ。


