湯川が膝をついている地面の下から薄暗い闇がもくもくとではじめたのだ。
「うわぁぁぁ。うわぁぁぁあああ!」
必死に自分を覆うように上がってくる闇を手で払う湯川。
その光景を傍にいた深青は冷めた目で見ていた。
助けようともせず、報いを受けるのは当然というように。
「助けてくれぇ! 助けてくれぇ! 悪かった、俺が悪かったぁぁぁ!」
湯川は断末魔の声のようにところどころ声が裏返りながら救いを求めるように右手を伸ばす。
だが、むなしく手は空をかく。
湯川は深青の目を見、右手を伸ばすことさえも無駄だということを確信する。
冷たく自分に怒りをぶつけるように睨むでもなく蔑むでもなく、無表情な目を深青は湯川に向けていた。
それがかえって深青の怒りを表しているようで湯川の恐怖心を駆り立たせる。
闇は無常にも湯川を覆いつくし始めていた。
「うわぁ! うわぁ! やめろぉぉぉぉぉ!」
湯川はもう誰に叫んでいるのかもわからないほどうろたえている。
遠巻きに見ていた大也たちでさえも、湯川に同情を覚えるほどだった。
だが、助けることなんてできない。
そんな力を大也たちは持っていない。
それができるのは、ただ1人。
だが、その唯一の人物は湯川を見捨てている。
大也たちは哀れみを込めた目を湯川に向けた。


