呻くような声を湯川は発していた。
微かに震えているのが深青たちにも見て取れた。
だが、すぐに何を思ったのか、今までの態度とは一変し余裕のある顔をする。
「……呪術を使ったのは香織だ。俺ではない。俺は何もしていない。関係ない!」
「本当に? よ~く、思い出してください」
それでも、深青の表情は変わらない。
その姿に湯川も最悪なほうへと自分を思ってしまう。
自分には何も影響はない………そうは思っていても深青の言うとおりに思い返す。
そして―――――
湯川は思い出したのか口をぽっかりと開ける。
その額にはうっすらと汗さえも掻いている。
その表情を見て、深青は満足そうに微笑んだ。
「思い出しましたか? そう。正木くんを襲ったあの時。あれは、一条さんではなかったはず………。儀式を正式には行っていないから大丈夫だと思いましたか? 儀式は関係ありません。人を呪い術をかける。それだけでも十分、呪術ですよ」
湯川はうろたえる。
それもそのはずだ。
大也の死を想定して呪った。
悪霊を大也のもとに送ったがそれはことごとく深青に返り討ちにされたのだ。
それを、実際には見ていないが大也が生きている。
それが自分の術が失敗したことを表している。
自分の死と直面していなかった湯川は初めて自分に襲いくる死の恐怖に体が震え始めていた。
「た、助けてくれぇぇぇ! 俺は死にたくない。死にたくない!」
恥ずかしげもなく湯川が地面に膝をつき、深青に懇願し始めた…………その時!


