「大也! どうしたの? ボーっと突っ立って」


ポンと後ろからクセ毛の髪をはねさせたショートカットの女の子が男の子の肩をたたく。


「みゆき。………いや、別に………」


彼は答えながらちらりと深青たちのほうをもう1度見る。


その視線を感じたのかみゆきと呼ばれた彼女も深青たちのほうを見た。


「知り合い?」


彼女の質問にそれが知りたい深青たちも耳をすます。


「………いや………。行こう」


そう一言だけ残して2人は門を通って中へと歩いていく。


その間にも何度か彼女は振り返るが男はそのまま1度も振り返ることなく歩いていった。










「なんだあ? わかんないやつ」


優奈と深青は納得いかないのか不思議そうな顔で2人の姿を見ていた。


「知らないなら、どうしてあんな意味不明な行動するわけ?」


「そうだね」


優奈の最もな意見に深青は相槌を打つ。


「そう思うよね。あーあ、あんな変なやつも一緒なんて嫌だな。これで同じクラスになんてなったら最悪」


相槌を打ちながらも深青の表情は少し翳っていた。


(何か、あるんだろうか。私に………)







「早く行かないと入学式始まるわよ」


深青の肩を軽くたたいてさゆりが笑顔を見せる。


その笑顔が深青には大丈夫と言ってくれている様に感じた。


「うわ! 本当だ。クラス表も見なきゃいけないのに! 深青行くよ!」


言うか早いか優奈は深青の手をひっぱり走り出した。


「私たちは保護者席にいるから、帰りは一緒に帰りましょう。さっきと同じところにいるからねー!」


「わかった!」


優奈は母たちの言葉に元気よく返す。