握り締めていた拳がプルプルと震え腹の底から声を出した。
「言いたいことはそれだけ?」
「なに?」
「言いたいことはそれだけかって聞いてるの」
涼やかなそれでいて冷たい深青の声に湯川は心外だというように眉毛をぴくりと上げる。
もっと恐怖に顔をゆがめたり、大也のように怒る顔を湯川は望んでいた。
それなのに目の前で自分を見る少女には全くの動揺は見られない。
それどころか冷静な顔で自分を見、その瞳で見られると自分のほうが気おされる気さえしてくる。
見た限り普通の少女だ。
容姿は綺麗な部類に入るだろうが、ただそれだけのことだ。
それなのに、なぜか何かわからない恐怖が自分に押し寄せてくる。
「自分に力があるからと言って、あまり軽く考えないほうがいいわよ。『人を呪わば、穴2つ』その言葉は知ってます?」
「あ………ああ?」
いきなり何を言い出すのかといった感じで湯川は口をゆがめる。
「人を呪えばあなた自身にも何かしら返ってくるということ。そもそも呪術とはリスクが高い術です。ある程度の知識があるものならば、自分の命を賭ける価値があるか十分に考慮してから使います。………あなたは、自分の命を賭けることを考えましたか?」
深青が話している途中から湯川の顔色が明らかに変わりだした。
それが、言わずとも語っていた。
「あ………ぁあ………」


