その場にいた全員の空気が凍りつく。
固まっていたその場を壊したのは深青の一言だった。
「ただの自分のための実験のためだけに、こんな事件を犯したと言うの! 正木くんまで狙って」
怒っている深青を見ても、湯川は冷めた視線を返す。
「なぜ、怒るんだか……。自分から俺のために力になりたいと言い出したのはこの女だ。俺は強要などしていない。それに……、何を思ったのか、第1化学室に術をかけるなど。人選ミスだな。この女のミスのせいで余計な目撃者まで出てしまった。余計な仕事を増やしてくれたよ」
あまりな言い草に傍に居た香織は湯川を見た後、目を伏せる。
その目からは涙が滴り落ちていた。
大也はあまりの言い草に湯川を睨みつける。
「お前、自分の恋人さえも利用したのか? 普通、大事な人なら危険なことをさせないのが普通だろ! それなのに、お前は!」
意気込む大也の言葉を湯川は嘲笑を浮かべながら一蹴する。
「何を勘違いしている。俺がこの女の恋人? こいつはただの使い魔だ。俺のために尽くして俺のために死ぬ。それがこの女の運命だ。それなのに、なんの役にもたたないどころか1つ間違えば俺が死ぬところだった。全く役立たずが!」
悪びれもせずに言い切るこの男に大也は底知れぬ怒りを感じる。
「おまぇ――――――!」


