「俺には、昔から不思議な力が宿っていた。おそらく、それが選ばれた人間だということだろう。つい最近では妖魔さえも自ら生み出し操れるまでになるほどに………」
湯川の話に優奈はぼそっと呟く。
「ねえ。今のって突っ込むところ？ ねえ、突っ込んでいいんだよね」
「優奈……。これからも、たくさん突っ込むところはあると思うから、いちいち反応してたら全く話が進まないからやめて……」
深青の悟っているかのような発言。
その言葉に優奈と同じ疑問を持っていた大也たちは、哀れんだ目で湯川を見ていた。
教師とかそういう肩書きはすでに、崩れた人格のせいで跡形もないほど忘れ去られていた。
深青は馬鹿らしい湯川の言への怒りと自分が利用されたことに気づいていない哀れさの奥で、真に湯川を利用した敵への憎悪が膨れる。
「あなたのそんな自慢話はどうでもいいのよ。要点だけ言って。今回の事件、これはどういった経緯でなぜ起こしたの？ それも一条さんを利用して」
深青は本題に全く入ろうとしない湯川に痺れを切らし、先を促す。
それを聞いた湯川はフゥーと大きく息を吐いたあと、頭を左右に軽く振る。
「全く、せっかちな人だね。……まあ、単純に言えば妖魔を人に憑けたのは初めてだから、実験に近い……、用はためしたかったんだな」
まるで、人事のように言う湯川。
