「おや、他のみなさんも聞きたいのかな?」
湯川は深青の後ろに駆けつけた優奈たちを見て、顎に手を置き、うっとりとした表情で視線をおくる。
それを見た優奈は『ウェ~』と舌をだした。
湯川のその様子はすでに、道化師のようだ。
おそらく、自分の言葉や行動の1つ1つにおいて自分で酔っているのだろう。
根っからのナルシスト……。
初めはわかっていなかった深青たちだが、長く話をしているうちにどんどん湯川の姿が見えてくる。
こういうナルシストには自分以外はどうでもいいという人間が稀にいる。
その代表例ともいえるだろう。
湯川が『聞きたいのかな?』というその言葉に反発して「聞きたくない!」と言ってしまいそうになるが、深青はあえて気持ちを落ち着かせ、「はい」とだけ答えておいた。
すると、だいたい想像はしておいたことだが、湯川は満足そうに高らかに笑う。
その行動そのものがますます馬鹿らしく見えていた。
「いいだろう。よ~く、聞いておくんだな。俺の話を………」
湯川はニッと歪んだ笑みを見せたのち、語りだした。
この事件の真相を……。


