「証拠とかそんなことはどうでもいいの。…何を勘違いしてるのかわからないけど、私は別にあなたを警察に突き出すとかそんなことは全く考えてないわ。ただ、あなたがどうやって妖魔を手に入れたのか、それが私は知りたいだけ」


深青の予想外の言葉に湯川は感心する。


どうせ、わざとらしい正義感をかざし、力があることで事件の真相を知り、解決を図っているのだと湯川は思っていた。


だからこそ、警察に突き出すなどとほざくと思っていたのだ。


言えば、鼻で笑ってやる。


そう思っていた。


だが、この目の前にいる少女はそんなものにも揺るがない大物だったようだ。


自分の言葉でなびくような軽いものではない。


「そんなに……知りたいのか? なぜだ?」


湯川は深青との会話を続ける。


その後ろで指を動かし、小さく印を作る。


少しずつだが、湯川の指先に熱がこもりだす。


「そうね……。おそらく、それが、私にとって大事なことだから」


意味のわからない答えを深青は返す。


深青の言葉の意味がわからず、一瞬動揺する湯川だが心を落ち着かせ術に集中する。


だが、相手を油断させるために会話は続ける。


「意味がわからないが……」


「意味なんてわからなくていいの。ただ、それが私には大事なこと。それだけ。……さて、もうそろそろいいかしら。術も仕上がってきた?」


術に集中していた湯川は深青の言葉に反応が遅れた。


会話が終わった後、3秒……。


湯川は驚愕の表情を浮かべ、最終段階まで行われていた術は止まり、消えていく。


「あらら……。せっかく、あんなに組んでいたのに……」


深青は呑気にもったいないというように、首を振る。