「一条さんは、あなたのために……。いえ、言うだけ無駄でしたね。あなたは…人の心なんてどうでもいいんでしょうね。じゃなきゃ、人に妖魔を憑けるなんてことできないもの」


「なにが言いたい」


深青の言っていることに何かを感じたのか、湯川の表情が変わる。


「言いたいことはたくさんあるけど、聞きたいことがあったわ。あなた、妖魔を飼ってるみたいだけど、それってどうしたの? もともとというわけではないよね」


「何を言ってる。そこまでわかってて俺が初めから持っていないわけないだろ」


「いいえ、初めから持つにはあなたの力は弱すぎる。長い時間、それも大量に所有するなんて不可能よ。いるたびにどこかしら調達している。そのほうが納得がいくわ」


深青の言葉に湯川が息を呑むのがわかる。


どうやら、当たりのようだ。




話している時に、深青は湯川の力を推し量る。


だが、湯川は自分で力を消すこともできないらしく、うっすらと体から妖気が出ている。


初めて会った時は感じなかったことから、その時には香織に自分の妖魔を植え付けたのだろう。




深青は一瞬フッと笑うと、湯川へと視線を向ける。


「あなたもいいように利用されてるわね。まあ、自業自得か。人を利用しようとするから自分に返ってくるのよ。……あなたに妖魔を譲ったのは誰?」


深青は湯川を見据える。


その目には逃がさないという意思が表れている。


「フッ……。なんのことだ。先ほどから…。お前が言っていることはただの推論だろう。証拠はどこにもない」