これが、恋というものなのだろうかと深青は思う。


だけど、すぐにその思いは自分の中で否定される。


 (違う! 恋はこんなものじゃない! 私が綺羅を思う気持ちはこんなものじゃない。歪んでも、私は人を犠牲にしてまで自分の思いを貫こうとは思わない。相手の幸せを願い、相手が間違っていることをしていたらそれを諭して、正しい方向へと導く。それが、私の中での恋だから……。人に自分の考えを押し付ける気なんてない。どれが正しいのかは人しだい。だけど、一条さんの思いは間違ってる。それじゃ……)


「一条さんは幸せになれないよ」


香織はハッとする。


そして、地面の一点だけを見つめた。




その表情が答えを表していた。


香織は自分でもわかってるのだ。


だけど、それでもそれを認めることができないのだ。




深青はぎゅっと唇を噛む。


「私、初めに言ったよね。一条さんには力がないって……。それなのに、あなたはさっきのような力を使うことができる。普通、納得できるものじゃないよね。術を使うことができるのに力がないなんて……」


深青は香織の視線を痛いほどに感じた。


その目には何が言いたいのかと問うているような鋭い視線が込められている。


「単刀直入に言うね。あなたの中には妖魔が植えつけられている」


「……………」