季節は5月。


5月といっても後半に近いこの時期にしてはあまりにも肌寒い風が砂川神社を覆っていた。


今から対決することも含めると、なんだかこの後のことをあらわしているかのような気持ちの悪い風だ。






 砂川神社は境内の大きさはそれほど大きくはない。


小さな、事務所らしきものもない、普段は無人の神社。


その神社を取り囲むように覆い茂る木々。


人から隠すにはもってこいの場所だ。





 誘った人物は先に待っていた。


それは妖しい笑みを浮かべて。


「待たせてごめんなさい」


今から起こる重苦しさなどそっちのけで、深青は『ちょっと待ち合わせに遅れました』と言う感じで答える。


緊張感のかけらもない。


「いいえ。みなさんで来ていただいてうれしいです」


2人は顔を合わせ「うふふふ」と笑い出す。






薄ら寒い笑いに2人の間ではすでになんらかの火花が散っているのを優奈たちは感じとる。


3人は一緒に来たものの、危険を避けるために深青たちとは離れた神社の鳥居をくぐったすぐ傍に場所をとる。


同じ空間にいても、いざ力を使うようなことがあるときに邪魔にならないためだ。


話し合いですめばいいのだが、その確率は限りなく低い。


相手が出す空気がそれを証明していた。